機動戦士ガンダムSEED Revival
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ラクス=クラインのデータ
肖像 Rakus
性別
年齢(CE78当時) 23歳
生年月日 CE55 2月5日
所属 統一地球圏連合平和の使者
階級・肩書き 統一地球圏連合特別顧問

平和の使者

愛機 無し
二つ名 平和の歌姫、愛の使者
登場作品 「SEED」「Destiny」「Revival」

概略

平和の歌姫、愛の使者、女神降臨など様々な呼称を受ける事実上の世界の支配者。その慈愛に満ちた思想で平和で豊かな世界の構築を目指す。

平和を乱す敵に対して正義の鉄槌を振るうことは厭わないが決して無意味に命を奪おうとはしないとされ、最良の名君との評価を受ける。

だが現実は資源、軍事、産業、経済と世界を動かす要素をクライン一派に掌握させ、世界を思いいがままに動かしている。

また反抗する勢力には「平和の敵」として親衛隊ピースガーディアンを差し向け徹底的に弾圧する。 世界の色を自らの色に染めるその行為に、「いったいどこが平和で幸福に満ちた世界なのか」と疑問に思うものも多いが、その完全無欠の権力を持つ彼女を恐れ、口にはしない。

確かに戦争は無くなり、以前に比べて犠牲者は減った。だが世界の不公平は正されず、それに異論を唱えることも許されない世界は果たして本当に皆が望んだ世界であるのだろうか?


物語における役割

SEED Revivalという作品においての中心人物。

作品のテーマである「賢者の絶対正義と愚者の試行錯誤」の対峙、すなわち「賢者の絶対正義」体現者である。

SEEDSEED DESTINYと原作において肯定され続けた彼女の哲学・正義は、より肥大化された形で描かれる。


ラクスの思考・行動様式

私心が無く理想を重んじる。

しかし反面、現実との折り合いが出来ず、地道な政治的駆け引きなどが出来ないし妥協もできない。また時に目の前の現実すら見ない・考慮しない事がある。

現実と理想をどちらを取るかとなると、現実を捨てて理想に走る。(現実7割、理想3割という折り合いが出来ない)

これは監視カメラの前でフリーダムキラに渡してしまった事(SEED)や、カガリをさらって来たキラを咎めず、カガリに帰国も促さず一緒に戦場介入する(Destiny)等、現実的解決と乖離した手法として、いくつも作品中に現れている。

また話し合いや政治的駆け引きなどは基本的にしない。

むしろ戦争を回避する手段を考慮せずに、武力で物事を解決する傾向が強い。

現に秘密裏にストライクフリーダムドムトルーパーの製造にいそしんだり、デスティニープランへの対応も即武力行使を判断している。

[1]

軍事的アプローチには余念が無いのに対して、政治的アプローチはあまりにずさんなのもそれを示している。

ラクスの対話は、基本的に自分の理想やスタンスを相手に主張するものとして行われる。美辞麗句や耳触りのいい理想を語ってはいるが、相手に歩み寄る、相手の立場を考える、あるいは相手の意見を汲み取るという姿勢は全く無い。 自分を認めてもらわなければ、そこで対話は終了となる。

自分と相対するものとは事実上対話を拒絶し、自己の考えに踏み絵を踏ませるというのが特徴だ。

これは自己の理想・信念に揺らぎが全くない事を示しているが、同時に(特に運命では)自己の行動・思考に対して疑問を差し挟む事が無し、意見も受け付けない。

彼女の自我は頑固というより傲慢の域に入っていると過言ではないだろう。

これが私心無く世界平和のためにつくす、という行動により人々の賞賛を受け、彼女の自我はより硬く強化されていく。

批判者・点検者もいないし排除するから、自分と違う価値観の者がいるという想像力は働かないし、ますます視野は狭くなる。

ラクスは自分の理想や正義=人々の理想や正義と考え、そのためには躊躇無く銃を取る。 銃口の向けられた人々がどう考えているのか、どういう人々なのかも想像せずに。

SEED DESTINYでの最終決戦で彼女はプラントに銃口を向けたが、プラントのために立つザフト兵の事は考えもしなかった。 議長と戦うという事は彼を守るザフト兵。ラクスの行為は同胞を殺す事を意味しているのに。

統治者としてのラクス

これらから考えるとラクスは典型的な「乱世の覇王」タイプの統治者だと考えられる。 明確な理想や目標を示し強力なリーダーシップで周囲を引っ張っていくタイプの指導者だ。 敵対者には容赦せず、即断即決。目的のためには根回しなど時間のかかる事はせず、実力で正面突破を図る。

したがって大多数のためには少数者を切り捨てる事に一顧の躊躇もない。 混乱期や未成熟な発展途上国に適した指導者といえよう。 「平和の歌姫」というフレーズから想像される姿とは、全く逆な指導者像が浮かび上がってくる。


ラクスの統治方法

仮にラクスが名実共に統一連合主席となれば、独裁型武力統治になる可能性が極めて高い。

現にSEED、Destinyでは独裁型武力思考を明確に実行している。

カリスマ性とリーダーシップに国民は従い、恒久的な世界平和という目標の元に、全世界が一致団結して進むという統治になるだろう。そこで生じる問題点は「やむを得ない犠牲」として無視される。

これもまた混乱期や未成熟な発展途上国に適した統治方法である。

カガリ=ユラ=アスハラクスの域まで強固ではないし、むしろ人の話を聞こうという傾向がある。

しかも確固とした信念を持っているわけではない(父ウズミの理想はウズミがその人生観から来たものである。彼女は父や父の理想を神格化しているに過ぎない)。

故にラクスの言葉に簡単に篭絡してしまう(「SEED DESTINY」)。 ラクスの引いたレールの上に、カガリが乗っている構図が見えてくる。


具体的な表現方向

SEED Revival」で書くことがラクスの思想・行動様式へのアンチテーゼならば、それをネガティブな方向に書く方法が適していると考えられる。

つまりラクスが統治する世界は大義名分はもっともらしく、しかし内容はトンデモな、という圧制型武力統治の姿になるだろう。

ラクスの統治方法は混乱期に適していると書いたが、それは逆に言えば安定期や成熟期には全く適さない、むしろ害悪になる統治方法とも言える。

具体的にはメサイヤ戦以降からカガリが主席に着くまではラクスの統治も順調であったが、主権委譲法案を提出を境に各国との関係が悪化。

もう混乱期は抜け出して安定したから各自自由にやりたいです、という諸国と、いいえ世界を一つにしない限り安定は来ません、というラクスカガリ)政権。

この対立に対しラクスカガリ)政権は武力支配で答えるという構図が描かれるだろう。

遍歴

ラクス=クラインという世界に影響を与えるカリスマはどうやって生まれたのだろうか。

戦時中、評議会議長シーゲル・クラインの娘。その美声、やわらかな微笑み 戦争中でありながら、平和への道を歌声に乗せて届ける、平和の歌姫。

父シーゲルが唱える、ナチュラルへの回帰、今は亡き母親の世界を愛しなさいという 言葉(←このへんはちょっと脚色:本来は「世界はあなたの物、あなたは世界の物」)

最初のナチュラル、コーディネーターの戦争は、プラント側の独立を求め、また コーディネーターという種を認知してもらうための戦いだった。

戦争の相手をいたずらに憎むのではなく、一緒に生きていこうという理想、 その美貌は、プラント内部で圧倒的な人気を得る。

半生をいわゆる上流階級以外の世界を知らずに過ごしていた。彼女に敵意を向けるものは存在せず、彼女の周囲はつらい現実もない、 穏やかな世界であった。

父親の薫陶を受け、平和の歌姫として活動するラクス。箱庭の中で理想を掲げ 活動する彼女。

そしてある時、ラクスは箱庭、やさしい隣人たちの世界から、一人AAに保護された初めて外の世界を体験する。

ナチュラル、コーディネーターとの摩擦を。そして同時に、まさに運命的に自分の世界の理想と出会いを果たす。

コーディネーターだから、ナチュラルだからという枠組みではなく 一人の人間として、やさしさゆえに苦悩するキラ=ヤマト

能力的な優越がナチュラルに対する驕りへとつながりがちなコーディネーターの中で、稀有な存在だったと言える。

ラクスを庇うだけでなく、自らを盾にして彼女をザフトに戻した少年、キラ=ヤマト

彼女にとってキラ=ヤマトという存在は、人生観を変えるほどの相当のインパクトを与え その姿はラクスの胸に深く刻まれたる。

自己犠牲という志を持ち、身分・境遇を超えても相手に底無しの優しさを与える少年、キラ=ヤマト

ラクスにとってはキラは神々しくも思えたかもしれない。 しかし悲しくもそれは「箱庭の世界」で生きてきたゆえの、貧しい人生体験がもたらした錯覚なのだが、本人は気づかない。

時は進みプラント議会は強硬派のパトリック=ザラを議長とし、よりいっそう戦争へと傾いてゆく。

権利をかちとる独立戦争のはずが、ナチュラル・コーディネイターの種としての排斥戦争へと変貌してゆく。

父シーゲルらクライン派が望んだ世界はそんなものでは決してなかった。

自分達の志したものが無に帰してしまう、そう危惧を抱いていたクライン親子。

しかし父は議長の座を追われ、自分は無力な娘にすぎない。父の部下にカリスマと持ち上げられても、どうしていいか分からない。

そこにかつて会った少年、キラ=ヤマトが担ぎこまれる。

優しさゆえに、親友を討ったことに悩み苦しみ、それでもなお平和を求め、自分に出来ることをしようとするキラ=ヤマト

彼女はこう考える。


「そうだ。キラに大きな力を与えれば戦争を収めてくれるだろう。何故ならキラは自己犠牲という志を持ち、底抜けに優しいのだから。世界のために力を使ってくれるに違いない」


悲しいかなラクスは、これまた「世界」が何のか考えずに、キラ=ヤマトにフリーダムを与えてしまう。

彼女の求める世界が唯一絶対のものではないのはずなのに。

その後は自らもキラ=ヤマトと同じような行動原理「自己犠牲という志を持ち、身分・境遇を超えても相手に 底無しの優しさを与える」の元、プラント政府を裏切る。

世界に無差別の優しさを巻き、戦争に狂う人々の目を覚まさせるために。だが裏切りは報復を呼び、反逆者として父シーゲルが死亡。

涙をこらえ父の理想、ラクスがいた平和な世界を求め、彼女は行動する。

パトリック=ザラ及びそれに従う者たちを切り捨てたこの時、彼女の視点は既に 絶対者のものに近かったのかもしれない。

ラクスの価値観・世界観に影響を与え、修正できる唯一の人間が亡くなってしまったために 世界を導こうとする意思と幼児的な価値観という相反する属性が固まってしまった。

「世界」はそこまで単純で底が浅くないのだが、彼女には見えない。しかし耳障りのよい理想は、人々を惹きつけるに十分であった。

高貴な理想にアスラン=ザララクスに賛同することとなる。その理想への道がどんなに険しく 困難なものなのか、まだ若い彼には分かっていなかった。

そして、平和という理想、分かりやすく、万民が納得しそうな意思のもと三隻同盟が成立。

世界の破滅を願うクルーゼという決して相容れない相手がいたこともあり 何の因果か、戦争が終結してしまう。

ラクスはこう考えた。「キラと自分たちの行動原理は正しかった」と。

我々の平和への 理想は間違ってないと。そして自分の気持ちが「そうだ」と思った時が正しいのだと。

「箱庭のお姫様」は世界を自分の「箱庭」と錯覚したまま、自分の手が世界の隅々まで回ると錯覚したまま、自分の、世界を愛する理想は、皆の理想だと錯覚してしまう。

ラクスにとって、『平和の歌姫ラクス=クライン』は、父のシーゲルの理想への役割のひとつ。

彼女の意識の中では、プラントに対しての責任ではなく父(死亡後はその遺志)への責任で、動いていた。

世界はこれから自分の理想の世界へと向かうだろうと、戦争を終わらせたことで世界が動いていると 信じ込み、それをとりあえず果たしたということで、自身と心身共に深く傷ついたキラ=ヤマトを癒すためもあってオーブ連合首長国で隠遁。

プラントはもうシーゲル(プラントと、ラクス両方にとっての『父』だった)のものでは無い以上、彼女に とって『歌姫』の幕はもう降りていた。

彼女の理想の体現者、運命の人、キラ=ヤマトの心を癒すことがラクスにとっては大切だったのだ。


しかし突然に命を狙われ、キラを戦わせてしまうことに。

彼の傷は癒されていないまま、ただやはり ラクスの理想の人キラは戦いを決意する。

その後オーブ連合首長国が戦いに巻き込まれ、アスランまでデュランダルに取り込まれラクス『個人』の世界が 侵食されていく。

そこで彼女も再び、密かに、戦うことを決意する。

シーゲルの理想を求めるターミナルやファクトリー、クライン派と連絡を繋ぎ、彼女の理想、そしてそれを体現してくれるキラのために準備をする。

平和のために戦う。

その矛盾に彼女は気がつかない。

『歌姫』ラクスの存在を欲しがる、議長の真意を知るために、またターミナルとファクトリーの情報を密に するために宇宙へ。

(これは、ミーア=キャンベルラクスの言葉を『歌姫ラクスの言葉だから』と無条件で信じないで欲しい、という忠告に近い。道を見つけていない・指導者に戻る決意をしていない以上、自分に味方しろ、では無い)

デュランダルの目指すものが少し見えてくる。

それが『プラント』の国益を考えた時に必ずしも一致しない。

ヘタをすればシーゲルらが志し、せっかく獲得してきたものすら喪われるかもしれない、という危機感がつのる。

ラクスがもしデュランダルと対決するつもりならと、『プラント』を思うゆえに、秘密裏にラクスに剣を託す 勢力もあった。

デュランダルオーブ連合首長国ラクス『個人』にとっての居場所)を抹消し、カガリラクス『個人』の友人)の 声を塞ぐのに偽ラクスミーア=キャンベル(『歌姫』の虚像を受け継いだ存在)を使った。

これを受け、ラクスは『平和の歌姫』 ラクス=クラインとしての自分を公の場で明らかにした。

少なくとも(自分にとっては過去のものであれ)『歌姫ラクス=クライン』を使って、自分の大事なものを 奪うことは許せなかった。

偽物疑惑で『歌姫』の看板を、 不明瞭なものとした。

ミーア=キャンベルの理想が自分と同じものならば、 彼女にラクスを演じてもらうことは問題はなかった。

しかしただ虚像だけを用いて 政治の道具して利用されるのは 自分の平和への理想と、反するものであった。


『反撃の声』ラストのラクスのセリフは、『歌姫』としての自分を一度は捨ててプラントを見捨てた自分が、プラント市民の前に立って責任を負い非難を受ける覚悟ができた、という意味である。

そして表舞台へ返り咲き。

『真実の歌姫~』の暗号は、反デュランダルの決起&クーデターを呼びかけるためのもので、彼女はあくまで『プラントの』ラクス=クラインとして立った。

そして、ラクスのもとに数多くの支援者が集まり、彼女は自分が間違っていなかったと考える。

集まらなかった人々が何を考え、何を求め、どんな平和を求めていたかを考えないまま。

待っていただけでは世界は平和へと向かわない。ならば自分の愛する伴侶と共に 世界を変えていこうと、平和を望む。

自らの平和の理想への障害物は彼女の賛同者と共に、摘み取っていった。

ラクスの理想のもとに、彼女の小さな箱庭を求めるために、隣人を愛し、皆笑う世界へと


ラクス=クラインの目指す平和は、平和への理想は尊いものである。

しかし、それは表面的なものであることもまた事実である。

人の数だけ正義はあり、人の数だけ平和の理想は違うはずなのに。

彼女は、自分の平和と、理想と、想いが、何より大切だった。

母の言葉、世界を愛しなさいという言葉。(本来は「世界はあなたの物、あなたは世界の物」)

ラクスの理想の賛同者は多く、傍らに平和の具現者キラ=ヤマトがいる。 最大多数の絶対幸福を重視し、そのためならば少数の不幸は見過ごす。まさに神の思考なのだ。

平和を約束する勢力という利権のもとに、世界が歪み、それゆえ反撃の声があがる。

一方でラクスたちには、自分たちの決断がいかなる情報に基づいてなされたものなのかを、検証する気がまったく無いし、しようという観念すらまるでない。

これは、彼女たちの為政者としての最大の欠点であるといえる。箱庭の外の声は、自然と届き難くなるのだから。

ラクスの平和…それに対する答えとは……

関連する出来事

  • ピースガーディアン設立
  • 併合演説
  • 平和の演説

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特記事項

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